公開日:2026年9月27日|執筆:誠ホールディングス株式会社(大阪市西成区・宅地建物取引業)
不動産の売買・リフォーム・民泊運営にかかわる法律やルールは、2025年から2026年にかけて大きく変わりました。当社は競売物件の取得から自社リフォーム、民泊運営までを自社物件で経験してきた立場から、「実務で何が変わるのか」に絞って整理します。売却・購入・宿泊事業をお考えの方は、契約や工事の前に一度ご確認ください。
※本記事は2026年9月27日時点の情報にもとづく一般的な解説です。個別の判断は最新の法令・条例と、税理士・司法書士・行政書士など各専門家への確認をお願いします。
まず全体像:施行時期の一覧
| 施行時期 | 改正 | 影響する人 |
|---|---|---|
| 2023年12月 | 空家等対策特別措置法の改正(管理不全空家の新設) | 空き家を所有・相続した人 |
| 2024年4月1日 | 相続登記の義務化(不動産登記法) | 不動産を相続した人 |
| 2025年1月1日 | 宅建業法施行規則の改正(「囲い込み」規制) | 売却を依頼する人・不動産会社 |
| 2025年4月1日 | 建築基準法改正(4号特例の縮小)・省エネ基準適合の義務化 | リフォーム・新築を計画する人 |
| 2026年4月1日 | 住所・氏名変更登記の義務化(不動産登記法) | すべての不動産所有者 |
| 2026年4月1日 | 改正区分所有法の施行 | マンションの所有者・購入検討者 |
| 2026年5月29日 | 大阪市 特区民泊の新規受付終了 | 大阪市で民泊を始めたい人 |
| 2026年6月 | 観光庁「ゼロ日規制」容認の通知(技術的助言) | 住宅宿泊事業(民泊新法)の事業者 |
| 2026年10月30日(予定) | 大阪市 旅館業法施行条例の改正 | 大阪市で旅館業を営む・始める人 |
1. 住所・氏名変更登記の義務化(2026年4月1日施行)
不動産の所有者(登記名義人)は、住所や氏名(法人は本店・商号)が変わったら2年以内に変更登記を申請する義務を負うことになりました。正当な理由なく怠ると5万円以下の過料の対象です。施行日より前に起きた変更も対象で、2028年3月31日までに申請が必要です。
あわせて、法務局が住民基本台帳ネットワークの情報をもとに職権で住所変更を登記する仕組み(いわゆるスマート変更登記)も始まっています。事前に生年月日などの「検索用情報」を申し出ておくと、転居後の登記が自動で行われます。
実務でのポイント
- 売却前に登記事項証明書を確認してください。登記上の住所が古いままだと、決済の前に変更登記を済ませる必要があり、司法書士費用と日数がかかります。
- 2024年4月からの相続登記の義務化(相続を知ってから3年以内、10万円以下の過料)と合わせて、相続した不動産は名義と住所の両方をチェックします。
- 当社では媒介契約の時点で登記情報を確認し、決済が止まらないよう事前にご案内しています。
2. 改正区分所有法の施行(2026年4月1日)
2002年以来の大改正といわれる区分所有法の改正が、2026年4月1日に施行されました。マンションの「建物の高経年化」と「所有者の高齢化」に対応するためのものです。
- 所在等不明の区分所有者を決議の分母から除外できる制度(裁判所の決定が必要)。連絡が取れない所有者がいても決議が進められるようになりました。
- 建替え決議要件の緩和。原則は5分の4のままですが、耐震性の不足、火災に対する安全性の不足、外壁等の剥落の危険、給排水管等の腐食、バリアフリー基準への不適合のいずれかに当たる場合は4分の3で建替えを決議できます。
- 管理や再生のための各種決議の円滑化(規約変更・修繕など)。
実務でのポイント
- 築年数の古い区分マンションは、これまで「建替えはまず無理」と見られてきましたが、再生の選択肢が現実味を帯びます。売却・保有・購入の判断材料が一つ増えました。
- 収益物件として区分を買う場合、管理組合の総会議事録や長期修繕計画を確認し、改正法を踏まえた動きがあるかを見ます。
3. 民泊・宿泊事業の規制強化(2026年)
2026年は、民泊が「拡大の時代」から「整理の時代」へ転じた年といえます。当社は大阪市内で自社物件を宿泊施設として運営してきましたが、大阪市はとくに動きが大きいエリアです。
3-1. 大阪市:特区民泊の新規受付終了(2026年5月29日)
大阪市は、国家戦略特区の特区民泊について2026年5月29日をもって新規の認定申請の受付を終了しました。認定済み施設の居室追加や床面積増加に関する変更認定の受付も同日で終了しています。背景は、ゴミ・騒音など近隣トラブルの急増です。市は約7,000施設を対象にした営業実態の調査も始めました。
受付終了前に認定を受けている施設は、これまで通り営業できます。今後、大阪市で新たに宿泊事業を始めるには、旅館業法の許可を取るか、住宅宿泊事業(民泊新法)の届出(年180日以内)を行うかの二択になります。
3-2. 観光庁:自治体の「ゼロ日規制」を容認(2026年6月)
観光庁は2026年6月、住宅宿泊事業法にもとづく届出住宅について、自治体が条例で営業可能日数をゼロ日と定める(実質的に禁止する)ことや、ICTを用いた管理の義務付けを容認する技術的助言を地方公共団体に通知しました。従来は「年180日」への上乗せ規制に一定の歯止めがかかっていましたが、その前提が大きく変わりました。
東京都区部ではすでに、2026年4月から7月にかけて上乗せ条例の強化が相次いでいます(管理者が常駐しない場合は週末のみ営業、制限区域の拡大、営業可能日数の大幅削減など)。大阪府内の自治体も今後、条例改正の動きが出る可能性があります。
3-3. 大阪市:旅館業法施行条例の改正(2026年10月30日施行予定)
特区民泊の受け皿として旅館業の許可を取る動きが増えることを見込み、大阪市は旅館業法の施行条例を改正します。主な内容は次の3点です。
- 構造設備基準の新設:住居がある建物(マンション・長屋など)で旅館業を営む場合、建物を鉄筋コンクリート造(RC)または鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC)とすること。同等以上の防音性能を市長が認める場合は例外があります。
- 従事者の常駐義務:宿泊者が施設を使用している間、営業者や従業者が施設内または周囲1,000m以内の管理事務室に常駐すること。既存の許可施設にも施行日から適用されます(経過措置なし)。
- 近隣周知規定の拡大:周知が必要となる施設規模の閾値を33㎡から200㎡へ広げ、騒音防止策や緊急時対応も周知事項に追加。
施行日前に許可申請や建築計画届を出した施設、既存許可施設の承継(居抜き)は改正前の基準が適用されますが、延べ面積の増加を伴う改修は新基準になります。
実務でのポイント
- 「宿泊目的で物件を買う」前に、その建物・場所で許可が取れるかを確認します。木造や鉄骨造の住居系建物では、大阪市の新条例下で旅館業許可が難しくなる見込みです。
- 既存の許可施設を承継(居抜き)する選択肢が相対的に価値を持ちます。会社ごと取得する場合は不動産M&Aのページもご覧ください。
- 常駐義務は既存施設にも及ぶため、運営コスト(人員・管理事務室)を収支に織り込み直す必要があります。
- 許認可の申請は、関連事業の創行政書士事務所HAJIME(別法人)と連携して進めます。
4. 建築基準法改正:4号特例の縮小と省エネ基準の適合義務(2025年4月1日施行)
中古住宅を買ってリフォームする方に直接かかわる改正です。
- これまで小規模な木造住宅(いわゆる4号建築物)は建築確認の審査が大幅に省略されていましたが、2階建て以上、または延べ面積200㎡超の建築物は審査省略の対象外になりました。
- リフォームでも、壁・柱・床・屋根・階段などの主要構造部について、一種以上の過半を修繕・模様替えする工事は建築確認申請が必要です。壁の半分以上を取り除くスケルトンリフォームや、一つしかない階段の移設などが該当します。
- 申請には構造や省エネに関する図書が必要になり、審査期間の上限も長くなります。工期の見積もりに余裕が必要です。
- 新築住宅は原則すべて省エネ基準への適合が義務化されました。
実務でのポイント
- 内装の張り替えや設備交換だけなら通常は確認申請不要です。「どこまでやると申請が必要になるか」を、計画段階で施工会社・設計者と線引きします。
- 競売や任意売却で取得した建物を大きく直す場合、申請費用と期間を総コストに入れて入札額や購入額を決めます。
5. 宅建業法施行規則の改正:「囲い込み」規制(2025年1月1日施行)
売却を依頼された不動産会社が、他社からの問い合わせを断って自社で買い手も見つけようとする「囲い込み」への規制です。専任・専属専任媒介契約で預かった物件は、指定流通機構(レインズ)に取引状況(公開中・書面による購入申込みあり・売主都合で一時紹介停止中)を正しく登録・更新する義務があり、事実と異なる登録は指示処分の対象になりました。
実務でのポイント
- 売主の方は、媒介契約後に発行されるレインズの登録証明書で、ご自身の物件の取引状況を確認できます。
- 当社は取引状況を正しく登録し、他社からのご紹介も受け付けます。早く・高く売るには、市場に広く情報を出すことが原則です。
6. 空家等対策特別措置法の改正(2023年12月施行)と売却
放置すると「特定空家」になるおそれのある空き家を「管理不全空家」として市区町村が指導・勧告できるようになりました。勧告を受けると住宅用地の固定資産税特例(最大6分の1)が外れ、土地の固定資産税が数倍になるケースがあります。
実務でのポイント
- 相続した実家などは、相続登記(義務)→住所変更登記の確認→管理か売却かの判断を早めに進めるのが得策です。
- 老朽化が進むほど解体・修繕費用がかさみ、査定額も下がります。当社は現況のまま売る場合と、最低限直して売る場合の両方を比較してご提案します。
競売制度そのものは?
不動産競売の手続(期間入札・3点セットのインターネット公開・売却許可決定・代金納付による所有権移転)自体に、2026年に大きな法改正はありません。ただし、落札した後は上記の登記義務やリフォームの確認申請、宿泊事業の許可要件がそのまま適用されます。「安く買えた」で終わらせず、取得後のルールまで見て入札額を決めることが、当社が自分の資金で学んだ一番の教訓です。
まとめ:売る前・買う前・直す前のチェックリスト
- 登記の名義・住所は現状と一致しているか(2026年4月〜義務化、過料あり)
- マンションなら管理組合の動きと改正区分所有法の影響を確認したか
- 宿泊目的なら、その建物・場所で許可が取れるか/既存許可を承継できるか(大阪市は2026年5月・10月で要件が変わる)
- リフォームは確認申請が必要な範囲か、工期・費用に反映したか
- 売却時、媒介契約とレインズの取引状況登録を確認したか
- 空き家は管理不全空家の勧告を受ける前に方針を決めたか
誠ホールディングスは、競売・リフォーム・民泊運営を自社で経験した不動産会社として、こうした確認を契約前に一緒に行います。日本語・中国語で対応しています。不動産売買・仲介のご案内/お問い合わせ
